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コラム:vol94【心に灯をともす】

秋の夜長。
日が沈むのが早くなり、夜の静けさが少しずつ深まってきました。
そんな中で、ふと見える灯(あかり)は、なぜか心をほっとさせてくれます。
行灯(あんどん)や提灯のような小さな灯でも、不思議と温かく感じるものです。

仏教では、この“灯”は「智慧(ちえ)」をあらわすと説かれます。
私たちの心の中には、もともと小さな灯がともっています。
しかし日々の忙しさや、怒り・不安・悲しみに包まれると、その灯が見えなくなってしまうことがあります。

お釈迦さまは、最後の説法で弟子たちにこう伝えられました。

「自らを灯とし、自らをよりどころとせよ」

誰かに照らしてもらうのを待つのではなく、
自分の中の小さな灯を見つけ、そこから周りを照らしていく——
それが仏の道なのです。

人に優しい言葉をかける。
疲れた自分をねぎらう。
静かに合掌して一日を終える。
そうした小さな行いが、心の灯を少しずつ明るくしてくれます。

外の光が消えていく季節だからこそ、
自分の中の灯を見つめ、育てていく時間を持ちたいものですね。