お知らせ

コラムVol.87【コーヒー】

一杯のコーヒーが教えてくれること

皆さんは、朝にコーヒーを飲む習慣はありますか?
湯気が立ち上るその一杯に、心がほっと落ち着く瞬間を感じる方も多いでしょう。
この何気ない日常の一杯にも、仏教の教えが静かに宿っています。

コーヒーは、豆を焙煎し、挽き、お湯で丁寧に淹れていきます。
時間をかけて、心を込めて淹れた一杯は、格別の味わいがありますね。
でも、同じ豆でも、急いで雑に淹れたら、味はまるで違ってしまう。
これは、私たちの「心の姿勢」と似ています。

仏教では「一念三千(いちねんさんぜん)」という言葉があります。
一つの念(こころ)には、三千もの世界(すがた)が含まれているという深い教えです。
つまり、どんな心で何かをするかによって、その結果や現れ方がまったく変わるのです。

朝のコーヒーを「面倒だな」と思って淹れると、その味はどこか苦く感じられるかもしれません。
でも、「今日も一日、感謝の気持ちで始めよう」と思って淹れたら、きっと心が和らぎます。
たとえ同じ一杯でも、心ひとつで世界は変わるのです。

そして、コーヒーを味わう時の「今ここ」の感覚。
これは、仏教で大切にされる「正念(しょうねん)=今この瞬間を正しく観る心」に通じています。
スマホを見ながら、考えごとをしながら飲むのではなく、
ただ目の前の一杯を丁寧に味わう。
その時間は、まさに瞑想のようでもあります。

毎日のコーヒータイム。
それは、自分の心と向き合う静かな仏道修行の時間かもしれません。
一杯の中に、感謝と気づきを込めて、味わいたいものです。