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コラムVol.86【蓮華】

蓮華に学ぶ心のあり方

今日は仏教でよく登場する「蓮華(れんげ)」、すなわち蓮の花についてお話しさせていただきます。

蓮の花は、ご存知のように泥の中から育ち、泥に染まることなく、清らかな花を咲かせます。

「泥中の蓮(でいちゅうのれん)」、あるいは「泥より出でて泥に染まらず」

これは仏教の修行者や私たち凡夫のあり方を象徴する言葉でもあります。

泥とは何か

では「泥」とは何でしょうか。それは、私たちの日常にある迷いや煩悩、怒りや嫉妬、欲望といったものです。人間社会に生きる限り、そうした泥のような環境の中に身を置かざるを得ません。完全にそれを避けて生きることはできません。

しかし、仏教は言います。「だからこそ、その泥の中でこそ、真の美しさが咲く」と。

蓮は泥を必要とする

興味深いのは、蓮の花が咲くためには、清水ではなく泥が必要だということです。澄んだ水では、あの力強い美しい花は咲かない。つまり、人生の困難や苦しみ、迷いがあってこそ、私たちはそれを糧にして心を育て、悟りへと近づいていけるのです。

浄土は「蓮華蔵世界(れんげぞうせかい)」とも呼ばれ、極楽浄土には蓮華が咲いていると説かれます。それは、私たち一人ひとりの命が、泥の中で育ちつつも、やがて悟りの花を咲かせるという象徴でもあるのです。

私たちは日々、様々な悩みや課題の中で生きています。しかし、だからこそ、その「泥」に感謝し、そこから学びを得ていく心を育てていきたいものです。

仏さまは、その泥を否定されません。むしろ「そのままでよい」「その中でこそ咲ける」と、私たちを見守り続けてくださっています。

今日という一日が、皆さまにとって、自らの泥を見つめ、そこから蓮を咲かせる第一歩となりますように。