コラムVol.85【四諦】
法話:四諦の教え - 苦しみの中にこそ、道がある -
今日は仏教の根本的な教えの一つ、「四諦(したい)」についてお話しさせていただきます。
四諦とは、釈尊(おしゃかさま)が悟りを開かれた後、最初に説かれた教えであり、仏教の基本でもあります。「諦(たい)」とは「真理」という意味で、「四つの真理」を意味します。
その四つとは、
- 苦諦(くたい)
- 集諦(じったい)
- 滅諦(めったい)
- 道諦(どうたい)
です。
第一:苦諦(くたい)-「人生は苦である」と見つめる
お釈迦さまは、まず「人生は苦である」と説かれました。
「苦」といっても、単なるつらい出来事ではありません。「思い通りにならないこと」すべてが「苦」だとされます。
老いること、病むこと、死ぬこと――これらを避けることは誰にもできません。また、望むものが得られなかったり、愛する人と別れることも「苦」です。
しかし、お釈迦さまは「苦がある」とただ言うだけではなく、「それを正しく見つめなさい」と教えられたのです。
第二:集諦(じったい)- 苦の原因を知る
では、この「苦」はなぜ起こるのでしょうか。
それが二番目の「集諦」です。
「苦は、欲望や執着から生じる」と説かれています。
「もっと欲しい」「もっとこうなってほしい」という心の働きが、かえって私たちを苦しめている。思い通りにならない現実と、思い通りにしたい心がぶつかるとき、私たちは苦しむのです。
第三:滅諦(めったい)- 苦はなくすことができる
しかし、お釈迦さまの教えは悲観ではありません。
三番目の「滅諦」は、「その苦しみは滅する(なくす)ことができる」と説かれます。
心の中の執着や欲望を手放すことができれば、苦しみもまた自然と和らいでいく。
そこに「安らぎ」や「涅槃(ねはん)」という心の静けさがある、と教えられました。
第四:道諦(どうたい)- 苦を越える道がある
そして四番目の「道諦」は、「苦しみを乗り越えるための具体的な道」です。
それが「八正道(はっしょうどう)」と呼ばれる、八つの正しい生き方の実践です。
- 正見(正しく見る)
- 正思惟(正しく考える)
- 正語(正しい言葉を使う)
- 正業(正しい行いをする)
- 正命(正しく生きる)
- 正精進(正しく努力する)
- 正念(正しい気づき)
- 正定(正しい心の安定)
これらを一歩一歩実践していくことで、私たちは少しずつ苦しみから離れ、穏やかな心に近づいていけるのです。
私たちは、苦しみを「避けたい」と思うものですが、仏教はその苦しみを「正面から見つめる」ことを教えます。
なぜなら、そこにこそ「目覚めの道」「心の安らぎ」があるからです。
苦しみは、決して無駄ではありません。
それを見つめる勇気が、私たちを変えていくのかと思います。