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コラム:Vol.78【八正道】

私たちは日々の暮らしの中で、悩みや不安、怒り、迷いといった「苦」に直面します。仏教では、そうした苦しみから解放され、安らぎと智慧に満ちた人生を送るための具体的な道筋を示しています。それが「八正道(はっしょうどう)」です。

八正道とは、釈迦(しゃか)―ブッダが説いた「四諦(したい)」という教えの中の「道諦(どうたい)」にあたるものです。「苦しみから脱するための実践法」として示された、8つの正しい生き方のことを指します。

それでは、八正道の内容をひとつずつ見ていきましょう。

1. 正見(しょうけん)

正しく物事を見つめること。
現実や人生の本質(無常・苦・無我)をありのままに見ることです。偏見や思い込みではなく、真理に基づいて理解する姿勢が大切です。

2. 正思惟(しょうしゆい)

正しい考え方、思考を持つこと。
欲望や憎しみに流されず、慈しみと智慧に満ちた思考を持つことを意味します。

3. 正語(しょうご)

正しい言葉を使うこと。
嘘をつかない、悪口を言わない、無駄なおしゃべりを避けること。言葉は心を映す鏡です。

4. 正業(しょうごう)

正しい行いをすること。
暴力を避け、人を傷つけない。清らかな行動を心がけることで、心にも安らぎが生まれます。

5. 正命(しょうみょう)

正しい生活手段を選ぶこと。
他者を搾取せず、誠実な仕事・生活を送ることです。生き方全体が仏道と調和していることが大切です。

6. 正精進(しょうしょうじん)

正しい努力をすること。
善いことを育み、悪しきことをやめる努力。自分を律して、心の成長に向かう不断の努力です。

7. 正念(しょうねん)

正しい気づき・注意を持ち続けること。
今この瞬間を見つめ、心の動きに注意深くなること。マインドフルネスに近い考え方です。

8. 正定(しょうじょう)

正しい心の集中(禅定)を保つこと。
心を一つの対象に集中させ、乱れた思考を静めることで、深い智慧へと導かれます。

なぜ八正道が大切なのか?

八正道は、単なる道徳や規則ではありません。これは「心のトレーニング」であり、「習慣の変革」でもあります。現代の悩みやストレスにも応用できる、非常に実践的な教えです。

例えば、

  • SNSでの誤情報や誹謗中傷 → 正語・正見
  • 過剰な競争社会 → 正命・正精進
  • 情報過多による混乱 → 正念・正定

といったように、現代社会の問題を乗り越えるヒントが、八正道にはたくさん詰まっています。

仏教の八正道は、「悟り」や「解脱」だけを目指す難しい修行ではなく、よりよく生きるためのガイドラインとも言えるものです。

忙しない日々の中で、自分の言葉や行動、心のあり方を少し見つめ直してみませんか?八正道は、その第一歩になるはずです。