コラムVol.70『花まつり』
昨日花まつりに参列しました。春の訪れとともに、全国各地の寺院では「花まつり(灌仏会)」が営まれます。毎年4月8日(関西では5月8日)に行われるこの行事は、仏教の開祖である、お釈迦さまの誕生を祝う大切な日とされています。
花まつりの由来
花まつりは、正式には「灌仏会(かんぶつえ)」と呼ばれます。お釈迦さまは今から約2500年前、インド・ルンビニーの花園で誕生されたと伝えられています。その際、天からは甘露の雨が降り注ぎ、花々が咲き誇ったとする美しい伝説が語り継がれています。
この故事に基づき、花まつりではお釈迦さまの誕生仏をお祀りし、その上から甘茶を注ぐ「灌仏」の儀式が行われます。これは、甘露の雨を象徴する行為であり、仏さまへの敬意と感謝の念を表すものです。
花まつりの形式と特色
寺院では、色とりどりの花で飾られた花御堂(はなみどう)が設けられ、その中に誕生仏が安置されます。参拝者は順に灌仏を行い、お釈迦さまのご誕生を祝福します。
また、一部の地域では、白い象を模した山車を引く子どもたちの行列や、法要・講話・甘茶のふるまいなど、さまざまな関連行事が催され、地域に根差した仏教行事として親しまれています。
花まつりは、宗教行事としての側面にとどまらず、命の大切さや平和への願いを改めて見つめ直す機会としても注目されています。特に近年では、寺院が主催する子ども向けのワークショップや文化イベントを通じて、世代を超えて仏教の教えに触れる場が広がっています。
華やかな春の季節に、自然の美しさとともに仏さまの慈悲に思いを馳せる「花まつり」。普段仏教に馴染みのない方も、この機会に最寄りの寺院に足を運び、仏教の原点に触れてみてはいかがでしょうか。
静かに手を合わせるそのひとときが、心を穏やかにし、日々の喧騒から離れる貴重な時間となるのではないでしょうか。